
【10月度】広島店 市況レポート

穴吹不動産流通株式会社 広島店 市況レポート(10月)
日本の市場調査分析レポート
2025年の日本不動産市場は、歴史的な円安とインバウンド需要の回復を背景に、都市部を中心に
堅調に推移しています。東京23区の新築マンション価格は平均平米単価205~207万円を記録し、
前年比10%前後の上昇を示しています。一方で、住宅ローン金利の上昇と建築コストの増加により、
新築住宅需要には縮小傾向が見られ、既存住宅市場の拡大が進んでいます。
オフィス市場では空室率が低下し賃料上昇が続く一方、物流施設では供給過多による空室率上昇が
懸念されています。
価格推移と取引動向
2025年の日本不動産市場は3年連続で全用途における地価上昇を記録しました。
都市部では再開発と国際資本の流入により高値圏が維持されており、東京23区では港区や千代田区で
400万円/㎡を大きく上回る物件も見られます。ただし、首都圏のマンション市場には高止まり感があり、
成約率の低下が観察されています。
商業用不動産投資額は堅調で、2024年通年で4兆円超に達する見込みであり、2025年も高水準を維持
すると予想されています。
金利環境の変化
日本銀行は長年続けた超低金利政策の正常化に舵を切り始めており、これが不動産市場に大きな影響を
与えています。緩やかな金利上昇環境を前提に、投資市場は概ね横ばいを予想されていますが、
日銀の利上げペースが想定を上回る場合、投資家のキャップレート目線が調整され、取引が停滞する
可能性も指摘されています。

住宅市場
2025年は住宅市場にとって大きく変化する年となっています。省エネ基準の義務化により新築住宅のコストが
上昇し、建築資材高騰や人手不足による労務費の上昇が住宅価格を押し上げています。
住宅ローン金利の上昇により新築需要の縮小が進むと思われ、取得しやすい「既存住宅」の流通量が拡大する
可能性が高まっています。
賃貸住宅市場では賃料上昇が顕著で、物価上昇などによる管理コスト増加に加え、金利上昇への対策としての
側面もあります。東京23区や近郊では空室率が改善傾向にあり、マンションでは前年同月比8~9%台の
賃料上昇が見られます。

オフィス市場
オフィス市場は空室率が低下し、賃料の上昇が続いています。新規供給が続いているものの、空室率は低い水準
で推移しており、2025年も堅調を維持すると見られています。
商業施設・ホテル
商業施設は三大都市圏にショッピングセンターの開設が集中しており、都心部への集中が継続し都心回帰を
促進させています。ホテル市場では外資系ホテルの開業が目立ち、インバウンド需要の回復を背景に活発な
開業ペースが維持されています。

物流施設
物流施設については新規供給がほぼ完了し、供給過多により空室率の上昇が懸念されています。
国際資本と海外投資家
2025年は大規模再開発や国際資本流入による価格上昇圧力が継続しており、海外投資家比率も高い状態を維持
しています。外資の割合は4分の1前後で推移し、中国・アメリカ資本を中心に商業物件の買い増し傾向が
目立っています。
経済環境
日本経済は内需・外需双方が牽引し、緩やかな回復が続くと想定されています。2024年には日経平均株価が
バブル期以来の高値を更新するなど景気回復の兆しが見え、不動産市場でも地価上昇や賃貸市況の改善が観察
されました。
インバウンド需要
歴史的な円安とインバウンド需要の回復という二つの要因を背景に、特に観光地では宿泊施設の建設が活発化
しています。

一般的な傾向からの推察
日本全体の傾向として、地方・郊外の住宅や賃貸投資、空き家再生などが注目テーマとなっており、
広島県においてもこれらの動きが見られる可能性があります。都市部で見られる高値圏維持や国際資本流入と
比較すると、地方都市では異なる市場特性を持つと考えられます。

<今後の見通し>
金利動向への注視が必要
日銀の金融政策正常化が進む中、金利上昇ペースが市場に与える影響が最大の注目点となります。
緩やかな上昇であれば市場は横ばいで推移すると予想されますが、想定を上回る利上げの場合、
取引停滞の可能性があります。
住宅市場の構造変化
新築住宅のコスト上昇と金利上昇により、既存住宅市場の拡大が継続すると見られます。賃料上昇により、
賃貸から持ち家への志向転換も一定程度進む可能性があります。
都市と地方の二極化継続
都市部では国際資本の流入と再開発による高値圏維持が続く一方、地方では空き家活用や既存住宅流通
といった独自の市場形成が進むと考えられます。
